“王騎ロス”を癒やす大沢たかお再発見ムービー3選 ─ 『おおかみこどもの雨と雪』『世界の中心で、愛をさけぶ』『妖怪大戦争 ガーディアンズ』

「キングダム」で王騎将軍を演じた大沢たかおさんに心をつかまれ、「ほかの作品でも違う表情を見てみたい」と感じたことはありませんか? 本記事では、大沢さんの〈声〉〈瞳〉〈肉体表現〉という三つの魅力をそれぞれ堪能できる映画――細田守監督のアニメ『おおかみこどもの雨と雪』、純愛ブームを巻き起こした実写映画『世界の中心で、愛をさけぶ』、そして三池崇史監督の特撮ファンタジー『妖怪大戦争 ガーディアンズ』をご紹介します。
『おおかみこどもの雨と雪』(2012)
作品データ
項目 | 内容 |
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テーマ | 親子の〈選択と自立〉 |
原作 | 細田守オリジナル |
脚本 | 細田守/奥寺佐渡子 |
監督 | 細田守 |
主演 | 宮崎あおい・大沢たかお(声) |
興行収入 | 42.2億円 |
受賞 | 日本アカデミー賞最優秀アニメーション ほか |
公開日 | 2012年7月21日 |
作品概要
19歳の女子大生・花は、夜の講義室で“おおかみおとこ”と出会い、種族の壁を越えた愛に身をゆだねます。やがて授かった姉弟〈雪〉と〈雨〉は、人間と狼の姿を自在に行き来できる“おおかみこども”でした。父の突然の死をきっかけに、花は都会を離れて富山県の山里へ移り住みます。13年の歳月の中で、天真らんまんな雪は「人」として学びを深め、内向的な雨は「狼」として森に惹かれていきました。二人がそれぞれの道を選び取る朝、花は母として「どんな姿でも帰る場所になる」と告げます。

アフレコは“家族録り”方式で行われ、食卓のシーンではキャスト全員が同じブースに入り、実際に食器を鳴らしながら掛け合いをしました。そのおかげで“生きた家族の空気”が生まれたと細田監督は語っています。大沢たかおは短い出番を承知のうえで参加し、マイクの前で顔をタオルで覆い、「呼吸だけで父性を表現する」という挑戦をされています。
作中の古民家“花の家”のモデルは、富山県上市町浅生にある築140年の邸宅です。2024年12月には国の登録有形文化財となり、現在も一般公開されています。訪れた方は裏山の棚田や縁側など、映画そのままの風景を体感できます。
王騎の剛胆さとは対照的に、大沢さんが演じる〈弱くて優しい父〉の息遣いがヘッドホン越しに静かに染み込みます。わずか15分足らずの登場ながら、観客の涙腺を決壊させるほどの存在感を放っています。
『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)

作品データ
区分 | 内容 |
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原作 | 片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』 |
監督 | 行定勲 |
脚本 | 坂元裕二・伊藤ちひろ・行定勲 |
音楽 | 朝川朋之/主題歌:平井堅「瞳をとじて」 |
主演 | 大沢たかお(大人の朔太郎)・柴咲コウ(律子)・森山未來(高校時代のサク)・長澤まさみ(アキ)ほか |
公開日・上映時間 | 2004年5月8日/138分 |
興行成績 | 興行収入85億円・観客動員約620万人(2004年実写邦画1位) |
受賞歴 | 日本アカデミー賞最優秀助演女優賞(長澤まさみ)、優秀音楽賞ほか多数 |
作品概要
広告代理店で働く朔太郎(大沢たかお)は、婚約者の律子(柴咲コウ)の行方が分からなくなり、故郷の四国へ向かいます。そこで彼は高校時代の自分——サク(森山未來)——が放送部の同級生アキ(長澤まさみ)と育んだ淡い恋や、二人だけの大切な約束を思い出していきます。現在と過去が交差する旅の中で、朔太郎は失われた時間と向き合い、もう一度大切な人との未来を見つめ直すことになります。

作品は公開と同時に“セカチュー現象”と呼ばれる社会的ブームを巻き起こし、骨髄バンクの新規ドナー登録者が急増しました。アキ役の長澤まさみさんは役づくりのため実際に剃髪し、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。ロケ地の香川県庵治町に建てられた「雨平写真館」は撮影後に復元され、カフェを併設した“純愛の聖地”として公開中です。ウルル撮影では黎明の赤い大地を収めるため、スタッフが午前4時から入山し、アボリジニの許可を得て時間内に撮影を敢行しました。主題歌の平井堅「瞳をとじて」は年間チャート1位を獲得し、映画とともに“平成ラブソング”の象徴となっています。
王騎は“大沢たかお=豪胆”というイメージを決定づける役ですが、朔太郎ではそのイメージを意図的に隠し、静けさと脆さで観客を引き込みます。一方は体で語り、一方は沈黙で語る――同じ俳優が真逆の手法を取ることで、作品のジャンルやサイズ感がどれだけ変わっても“物語にリアリティを与える核”であり続けることを証明しています。
3 『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(2021)
作品データ
項目 | 内容 |
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テーマ | 妖怪と人間の〈共生と進化〉 |
原案 | 水木しげる/荒俣宏 |
脚本 | 渡辺雄介 |
監督 | 三池崇史 |
主演 | 寺田心・大沢たかお |
公開日 | 2021年8月13日 |
20XX年、日本列島を貫くフォッサマグナから“妖怪獣”が出現し、妖怪界と人間界は未曽有の危機に直面します。妖怪総大将・ぬらりひょんは伝説の武神“大魔神”を復活させる決断を下しますが、その鍵を握るのは渡辺綱の血を引く所沢の小学五年生・渡辺ケイでした。狸の総帥・隠神刑部(大沢たかお)は手下を率い、炎をまとうバイクでケイを護衛します。狐面の剣士・狐面の女(杉咲花)や雪女(大島優子)ら百体を超える妖怪とともに、東京湾に降臨した巨獣へと挑みます。しかし“大魔神”の力を発動させる代償として、ケイの大切なものが失われようとしていました──。

- 隠神刑部の特殊メイクは装着に3時間、除去に2時間を要しました。全身が毛皮スーツに覆われるため体温が上がりやすく、撮影日は氷嚢を抱えて休憩していたと大沢さんが試写会で冗談まじりに明かしています。
- 劇中で炎を噴くバイクは実際に改造された本物のマシンで、大沢さんは「狸がバイクでジャンプする違和感をリアルに見せるため、自分でアクセルを握った」と語り、主演の寺田心さんを驚かせたエピソードが話題になりました。
- 1966〜68年の特撮映画『大魔神』以来55年ぶりとなる巨神像のスクリーン復活が実現しており、平成版(2005年)の主役を務めた神木隆之介さんが担任教師としてカメオ出演し、シリーズの“縦糸”をつないでいます。
王騎で見せた威圧感と、狸・隠神刑部としての茶目っ気が同居しており、重厚な特殊メイクの奥で光る大沢さんの眼差しが、CG満載のカーニバルを“生身”の迫力へと引き戻す瞬間が痛快です。